研究課題/領域番号 |
19401046
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
塚田 誠之 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 教授 (00207333)
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研究分担者 |
大野 旭 (楊 海英) 静岡大学, 人文学部, 教授 (40278651)
長谷川 清 文教大学, 文学部, 教授 (70208479)
吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60230786)
武内 房司 学習院大学, 文学部, 教授 (30179618)
松本 ますみ 敬和学園大学, 人文学部, 教授 (30308564)
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キーワード | ネットワーク / ボーダーレス化 / 中国南北の国境地域 / 経済 / 情報 / 宗教 / 民族 / 政策 |
研究概要 |
本年度は中国の国境地域における多民族のネットワーク構築の実態、国境地域のボーダーレス化の実態について、予備調査を行い、問題点を整理することに重点を置いた。そのため研究代表者や研究分担者がのべ8回、1回につき約8〜19日間、現地で調査と討議を行った。まず、国境を越えるネットワーク構築が進んでいる現状について、中国北部の内モンゴル自治区とモンゴル国のモンゴル族、中国南部の広西とベトナムのタイ系民族、雲南のムスリムなどで把握された。次にネットワーク構築の要因として経済・政治・宗教の多様な側面が把握された。経済的な面は最近の市場経済化以降に顕著で、ベトナムのソンラー市では、道路の整備によって交易ネットワークが激変している。経済的なネットワークのありようは多様である。広西チワン族はベトナム側と国境を越える交易を盛んに行うが、民族を越えた結びつきと血縁・友人関係に基づく場合がみられる。ネットワークは情報伝達の経路である。タイのヤオ族は10年前には海外への出稼ぎが多く、現在は国内出稼ぎに転化したが、その要因にネットワークに流れる情報がある。次に政策がネットワークに影響を及ぼしていることは、雲南の徳宏州で民族が国民国家に再編される過程で動員型の人口移動政策が実施されたことにみられる。さらに、宗教を要因とするネットワークについて、雲南ムスリムの省境・国境を越えるネットワークが活性化し、アラビア語学校が復興し隆盛を極めているが、それらはイスラームの復興と期を同じくしていることが把握された。なお、これらの現地調査には、海外共同研究者が全面的に協力した。海外共同研究者のうち呉偉峰(広西壮族自治区博物館館長)を3月に8日間の日程で招聰し、国立民族学博物館で国境地域の民族の文化資源に関する打ち合わせを行った。これらの成果により今年度の目的は達成されたと言える。
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