研究課題/領域番号 |
19401047
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
南 真木人 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 准教授 (40239314)
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研究分担者 |
安野 早己 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (40144307)
MAHARJAN Keshav Lall 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (60229599)
藤倉 達郎 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (80419449)
佐藤 斉華 帝京大学, 文学部, 講師 (10349300)
名和 克郎 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (30323637)
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キーワード | 文化人類学 / マオイスト / 人民戦争 / 共和制 / 王制 / 社会運動 / 選挙 / ネパール |
研究概要 |
本研究の目的は、王制から連邦民主共和制に政体が変革し、マオイストことネパール共産党(毛沢東主義派)が政権を担うまでに席巻したネパールにおいて、社会政治的な変動とその背景を地域社会や民族/カースト諸団体のレベルから明らかにすることである。もって、ネパールで起きている歴史的な変革を底辺から多面的に解釈することを目指す。本年度は、2008年4月10日の制憲議会選挙においてマオイストが第一党に躍進し、政権与党になった事実を踏まえ、マオイストの選挙運動とその受けとめられ方、他の政党の動向、開票結果の分析を複数の地域および団体を対象に行った。マオイスト躍進の背景として、巧みな選挙キャンペーン、マイノリティ包摂への積極的な取り組み(候補者の留保制)、「新しいネパール」という時勢やムードとの合致、(マオイストが負けた場合の)人民戦争再開に対する恐怖などが考えられた。さらに、本研究では引き続き、マオイストの人民戦争(1996〜2006年)の戦後処理、すなわち国内避難民の帰還問題や戦争犠牲者への補償問題、マオイスト兵士「殉国者」処遇のポリティクス、人民解放軍の国軍統合・再編問題に関して調査をすすめた。あわせて、民族/カースト諸団体とマオイスト運動の連関を探るため、マイノリティ包摂の諸制度、マオイストが構想する民族/言語別の連邦制、南部低地(マデシ)の自治権要求に関してデータを集めた。これらのデータとその多面的な分析は、マオイスト運動が地域ないし民族/カースト諸団体に対し、文化社会的、政治経済的にいかなる影響をもたらしたかを明らかにするとともに、マオイストの席巻という稀有な「ポスト社会主義」事例を考察する上で意義がある。マオイスト議長であるダハル首相の辞任(2009年5月4日)により、ネパールの政情は予断を許さない。数少ないマオイスト研究および現代ネパール研究と位置づけられる本研究は、ますますその重要性が増している。
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