研究概要 |
平21年は,親族・姻族ネットワーク以外に重要な意味を有する社会ネットワークを抽出するための調査を実施した。すなわち,研究代表者瀬地山がベトナム,連携研究者中西がフィリピン,研究協力者樋渡がウズベキスタンのそれぞれの調査地において,豊富な親族・姻族関係を有する複数の調査地間の親族・姻族ネットワークにかんする調査を集中的に実施した。この場合の調査対象地区は,まず基準調査地との間に豊富な親族・姻族を有する地区であることが必要条件であり,その中から,地理的距離,生活水準と土地所有権の有無などの属性別に選定を行った。その上で,(1)親族集団毎の家系図を作成し,通婚圏と親族・姻族圏を理解するに足るデータの収集,(2)ネットワーク分析では抜け落ちてしまう定性データについてのインタビュー調査による収集を実施した。この作業によって,親族・姻族ネットワークのグラフを導出することができ,様々なネットワークの特徴を分析することが可能になる。さらに,(3)調査地間には,どのような人・モノ・金・情報の流れが,社会ネットワークの上に存在するかを,参与観察とインフォーマントへの集約的なインタビュー調査によって把握することができた。以上のデータは,次年度に,連携研究者後藤則行を中心として行われる各都市圏におけるシミュレーション分析の基礎となる。 本年度の研究業績については,研究代表者瀬地山は英文著書発行の準備に追われたが,連携研究者中西はフィリピンにおける招待講演を通して,アテネオ・デ・マニラ大学のバウティスタ教授他と有益な討論を行い,近々,その内容は出版予定である。連携研究者幡谷も英文報告書を上梓した。翻訳作業を手伝うアメリカ側の研究者の病気のために、遅れていた研究代表者瀬地山の英文著書執筆作業については、繰り越した助成金を使うことで、順調に進めることができた。
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