研究概要 |
本年度は,成果とりまとめのための作業が主体であり,現地調査については,連繋研究者幡谷,中西がそれぞれ,コロンビアとフィリピンにおいて,これまでに不足したデータを補うための補足調査を実施した。その結果,都市居住者の社会ネットワークが彼らの社会経済状況に与えた影響について,コミュニティ形成過程を踏まえた検討を終え,東アジア(瀬地山),フィリピン(中西),コロンビア(幡谷)について,最終報告書をすでに提出するか,提出する準備を整えるに至った。すなわち,瀬地山については,東アジアにおけるジェンダーの問題に,経済発展過程におけるコミュニティ機能の脆弱化が与えた影響を,家族制度の特異性を重視し,行った分析を終えた。その成果については,邦文報告書2冊として2011年度中に発行されることが確定している。また,英文書籍1冊(Gender and Female Labor in East Asia)についても発行最終段階に到達している。連繋研究者幡谷は,コロンビアのエスターナド大学kらスペイン語による単著を公刊した。それは,1992年かfら2003年までの調査地におけるコミュニティの長期間の自立的発展を住民間のネットワークに着目しつつ分析したものであり,すでにコロンビアにおいて高い評価を得ている。連繋研究者中西も,1985年から2010年までの調査を英文書籍1冊(仮題:Hidden Community Dyanamics during Economic Development)としてまとめている最中であるが,コミュニティの独自の発展が貧困削減に積極的役割を果たすことを社会ネットワーク分析を用いて示したフィリピン国立大学における招待講演は,同大学を通じて大統領府貧困削減委員会に政策提言としてとりあげられ,現地社会への還元の役割を果たした。
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