2007年4月29日から5月1日にかけて、研究代表者・分担者ら9名が南山大学において研究会を実施し、今後の調査計画の企画立案を行った。同年8月13日から8月27日にかけて、ベトナム・アンザン省及びカンボジア・コムポンスプー州において広域調査を実施した。この結果、プレアンコール期に属する未報告碑文3件を発見し、コムポンスプー州コーンピセイ郡において寺院建築用黒色片岩切り出し場・同国バッダムバーン州で1件報告されているのみの高・幅ともに約1〜2m程度のプレアンコール期に起源を持つと思われる土塁遺構1件等を発見した。 また、8月17日から27日にかけて、研究分担者は、カムポート州・アンコーチェイ郡における複合土塁遺跡トラペアントナールの測量を行い、同遺跡周辺における水流に関する聞き取り調査を実施した。 更に、8月28日から31日にかけて同国王立芸術大学において収集遺物の実測・収集レンガ中におけるモミガラ実測を行った。この結果、従来先史時代末期と想定されてきたトラペアントナール遺跡が、概ね5世紀前後を中心とする可能性が高いこと、寺院建築や土塁遺構はアンコーボレイを例外として、5世紀後半より遡るものではないことが推測された。 モミガラ実測データは従来までに集積されたデータと統合され、解析されたが、従来までと同様、地域・地形・時代によって顕著な相違を示すものではなく、カンボジア国家形成過程における稲作を中心とする経済下部構造の変化は、稲作あるいはこれに伴う居住の面的拡大があったとしても、品種・作付け方法に大きな変化があった可能性は少ないとの仮説が強化された。 なお、本計画においては2008年3月後半に前述のコーンピセイ郡土塁再調査・コムポントーム州等における広域調査、王立芸術大学におけるワークショップ等を予定している。
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