研究課題
アジアにおける女性の国際移動を、家事・ケアなどの家庭内労働とエージェンシーを通じた国際結婚(業者婚)から明らかにした。本科研の最終年度である2009年度に掲げた研究目的の主な結果は次のとおりである。第一に、外国人家庭内労働者の受け入れ国のマレーシアと台湾、送り出し国のフィリピンについてインタビュー調査を進めることで、アジアの家庭内家事・ケア労働者について主な受け入れ国(シンガポール、香港、台湾、マレーシアと主な送り出し国(インドネシア、フィリピン、ミャンマー、スリランカ)のすべてを調査した。そのことにより、家事労働者の移動は、当人にとっては2国間ではなく、リージョナルな(複数国間)移動であることが鮮明になり、行き先の決定に影響する就労国での労働条件、エージェンシーを含むネットワークのあり方などが明らかになった。第二に、海外就労と国際結婚が、女性本人とその定位家族の生活ストラティジーという点でどのように連続しているのかを中国女性の国際結婚のインタビュー調査(ハルピン・長春・南寧・丹東・大連)、インドネシアバタムでのインタビュー調査から検討した。海外就労も国際結婚も、本国への家族の送金と自分のライフチェンスの拡大という点で共通する部分があることが鮮明になった。そして、アジア地域の国外労働移動において、これら家事・介護労働者が抱える問題と日本の研修生・実習生が直面している問題との共通項(雇用主と連結するビザ、エージェンシー・ブローカーの仲介費用の高騰、人権侵害など)をベトナム研修生の調査を加えることで明らかにした。研修生・実習生のなかには高金利で前借りしたエージェシ費用と日本での獲得賃金とギャップによって、借金返済ができず、半ば構造的に正規労働市場から押し出され、非正規に移行するという傾向が認められた。これは台湾のケア労働者の逃走ケースのインタビューにおいても観察されたところである。
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家族社会学研究 21巻2号
ページ: 195-200
The Asian and Pacific Migration Journal, Volume 18(4)
ページ: 497-517
http://web.ias.tokushima-u.ac.jp/socio-ueno/