当該研究は、東南アジア諸国におけるMSM(Men having Sex with Men)のHIVならびにSTI感染状況その他を確認するとともに、これに対する各国現地政府・国際機関・研究機関等による対応の内容およびその諸特徴を特定することを目的とするものであるが、平成21年度においては以下のような取組を行い、その結果、以下のような成果を得た。 1、これまで参加した国際学会に加え、今年度はバリ島での「第9回アジア・太平洋国際エイズ会議(ICAAP9)」で得た最新資料を用いて、現在、エイズ分野の国際協力活動で見られる新しい動きの一つとして、スティグマに注目した国際協力事業の特徴やその理論的背景について整理し、その結果を論文としてまとめ発表した(『解放社会学研究』2010年夏刊行予定。査読有)。また、これら会議で得た知見を利用しつつ、別資金で得られた現地調査の機会を生かし、フィリピンでのエイズとMSMについて論じた論文を勤務先大学紀要に発表した。 2、これまでの国際会議参加を通じて知己を得た元アジア太平洋エイズ学会長のデニス・アルトマン教授を日本に招聘し、「アジア的価値」という概念を用いて、MSMとエイズのコンテクストを論じていただいた(東京と京都の2会場)。結果、数十名の参加者とともに、東南アジアにおけるエイズとMSMという問題そのものの重要性を再確認しつつ、宗教や文化、貧困、人権などのさまざまなキーワードを用いながら、HIV感染状況の疫学的確認よりももっと大きな文脈をキャプチャーしてこの課題を論じることの重要性を確認した。
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