オフショア信託法制の実地調査として、チャネル諸島に位置づけられる、ジャージー島およびガーンジー島の調査を行った。最新の信託法の規定をはじめ、関連する法規定についても確認した。さらに最近の重要判例やそれらに対する現地実務家等の見解もできるかぎり調査した。またそれぞれの法域の法制度の沿革や歴史的経緯も調査を行なった。具体的な訪問調査地は、Law Commission、裁判所、弁護士事務所、図書館、専門書店、歴史資料館等である。 両島は英国に近接し、英国の自治領的位置付けであるため、英国の資本が多く投資され、また英国に本拠地を有する弁護士事務所等によりリーガルサービスが行なわれているケースも多い。また、世界各地のオフショア法域には、同様に旧大英帝国の自治領や植民地等であったところが非常に多い。それゆえ、ジャージー島・ガーンジー島をはじめ、諸オフショア法域に関する基礎的な文献調査を、ロンドンの諸大学および諸専門書店・大英図書館・ケンブリッジ大学・エジンバラ大学等にて行った。 さらに、ロンドン大学キングスカレッジ教授でWithers法律事務所顧問のPaul Matthews氏を研究協力者として迎えることができた。Matthews教授は、英国信託法の権威で、大陸法諸国の信託類似制度にも極めて造詣が深く、ジャージー島の信託法の実質的起草者である。氏から種々情報の提供を受けると共に、今後の研究についてもアドバイスを得た。 なお、近時、オフショア諸法域を含めた欧州統一信託法制定へ向けての作業が積極的に行われており、一方で、フランス等の大陸法諸国で信託法が制定されている。こうした欧州での動向についても、調査を行った。特に、ECの協賛を受けた欧州の比較法プロジェクトに参加し、欧州諸国の研究者と、統一信託法の可能性および各国における信託法制定の可能性等について議論を行った。
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