平成19年度では、以下の実績があった。 (1)学術誌への投稿:2007年8月にマレーシアで開催されたInternational Congress of Asian Scholars (ICAS)で河野、ジャムハリ(インドネシア、国立イスラム大学)、カマルニザム(マレーシア国立大学)、ワディ(フィリピン大学イスラム研究所)は研究課題と同様の内容のパネル発表を実施した。その後、この学会で発表された各ペーパーは論文掲載を目的として現在国際的な学術誌に投稿中である。 (2)意識調査の実施:インドネシアでは、イスラム寄宿塾の生徒と教員に対しテロ問題などについての意識調査を実施した。イスラム寄宿塾の生徒の間では、民主主義に対するコミットメントは高いが、西欧に対する猜疑心は根強い結果がでた。フィリピンでは、ミンダナオ西部のイスラム学校で、学校の組織形態、生徒のイスラム意識について意識調査を実施した。フィリピンでは、ムスリムは少数派であるので、ムスリムであることで差別を受けるなどの問題意識を強くもつが、ムスリムであることに誇りを持ち、学習についての意識は非常に高いことがわかった。また、インドネシアとは対照的に西欧に対する猜疑心は強くない。マレーシアでは、政府の規制があったため、意識調査実施の許可は間に合わなかった。しかし、引き続き許可の申請中である。 (3)イスラム学校ネットワークの調査:インドネシアではイスラム急進運動が強い学校群のネットワークの調査が行われ、平成20年度の研究会で発表される予定である。また、ブジンスキー教授の現地調査インドネシア、マレーシア、シンガポールで行われ、東南アジアを越えたネットワークの調査を論文に纏めている。
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