米国における最低賃金規制についての具体的な調査対象として、おおむね予定どおりカリフォルニア州内諸都市における聞き取り調査をおこなった。その際、自治体発注の公共サービスに関して受注事業者に対し貧困線以上の賃金を労働者へ支払うように義務づける「リビング・ウェイジ条例」の実状が中心的なテーマとなった。聞き取り調査が年度末だったため、成果の発表には至っていない。 ・平成19年11月10日から11日:研究協力者の来日を機にその後の研究計画を示し助言を得た。 ・平成20年2月4日から15日:第1回現地調査として、ロスアンゼルス市のカリフォルニア大学ロスアンゼルス校レイバーセンターにおいて、研究協力者である同大学教授ケント・ウォン氏よりその後のインタビュー先についての情報提供を受けた。 ・平成20年3月13日から24日:第2回現地調査として、主に次の自治体等にインタビューを行った。サクラメント市の調達部門、サンフランシスコ市の労働基準推進部門、カリフォルニア大学バークレー校、ロスアンゼルス市の調達部門、ロスアンゼルス市においてリビング・ウェイジ条例策定にかかわったもと市会議員。 2回の現地調査を通じて得られた知見の概要はつぎのとおりである。 1.公共工事の受注事業者に相場賃金の支払いを義務づける規制と類似した位置づけで実際の規制が行われている自治体が複数あった。 2.しかしながら、その検証作業には自治体ごとに温度差があり、単なるサンプル調査以外の方法に転換したところがある。 3.いずれにせよ、リビング・ウェイジ規制それ自体は影響する労働者数が比較的少ないため、たとえば移民の労働条件の全般的向上にむけた象徴としての意味合いの重視される場合がむしろ多い。
|