本研究は、20世紀前半を中心としたバンコクにおける華人移民社会の潮州への送金を取り上げ、会館・批局・祖廟の活動にみられる非市場的資金(家族送金・寄付や慈善活動資金)の流れを、近年発見された新たな資料調査を通じて歴史的に明らかにすることを目的とする。具体的には、潮州およびバンコクにおいて、『僑批文物館』により収集された送金資料を複写収集・分類し、非市場的側面に着目して送金の目的別・地域的実態を明らかにする。そして、両地において、宗族の祭祀、祠廟、学校その他の公共的な支出に関する支出項目別分析を行い、華僑送金と移民元地域コミュニティの関係について明らかにする。研究代表者、連携研究者は、バンコクと潮州において、1)僑批関連書簡・封筒、梢案・公文書資料の調査収集、2)中国廟における碑文調査・収集、をおこなった。バンコクでは小泉を中心に、(1)潮州会館・客家会館などを訪問し、会館活動に関する記録を調査し、また(2)中華街の廟を訪問し、碑文・扁額等の調査を行った。潮州では濱下を中心に、(1)汕頭市档案館にて僑批関連資料を調査・収集し、(2)中国廟、宗祠を訪問し、碑文・扁額等の調査を行った。そして収集した史資料を順次整理し、成果公開にむけた目録データベースの作成を進めた。
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