(1)華僑の本国送金は、これまでの経済史研究においては家計補助もしくは貿易決済手段として主に議論されてきた。これに対して、資金が非市場的な目的をもって移動することをバンコクならびに潮洲において送金資料の調査、両地の各種社会活動の調査を行うことにより、華僑送金の社会的・地域的な機能の重要性を数量的にも確認した。また、(2)移民先社会における会館ならびに宗祠の役割は、単に移民元の地域結合を移転させたというものではなく、むしろ移民先における新たな地域コミュニティの形成と運営に重要な役割を果たしていたという内実を明らかにし、非市場的組織の果した地域経済の中の役割の重要性を改めて強調できた。
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