研究概要 |
研究初年度些あたる2007(平成19)年度は,主に(1)予備研究時点での収集データの分析,(2)アメリカにおけるけ歴史的環境保存運動に関する文献研究,(3)日本国内における歴史的環境保存を軸にしたまちづくり事例の現地調査,の3本の柱を中心に研究を行った。 第1の柱である予備研究時点のデータは,アメリカ・ミズーリ州セントルイス市内での歴史的建造物の取り壊し事件のヒアリング・データである。「アメリカ保存運動の総本山」とも謂われる「ナショナル・トラスト」が,ある歴史的建造物の保存のために・隣接する別の歴史的建造物の敵り壊しを容認した「Old Post Office取り壊し事件」は,その経緯や全体像がほとんど知られていない。現地での関係者への聞き取りおよび写真撮影データを整理分析することで,事件の基礎データの整備を図った。こうした予備的考察の結果,全国的保存運動組 第2文献研究は,網羅的にアメリカ保存運動に関する文献を収集し,その読み込みを行った。この領域の文献は国内にはほとんど存在しておらず,体系的な収集を試みた。収集は継続的に行っているが,現時点までに見えてきた論点は,アメリカの保存運動が,きわめてナショナリスティックな動機から起動していること,制度化を優先させたために,かえって制度との距離を失い,科学的な視点や現状への批判精神を十全に発揮できなかったのではないか,というものである。 最後に第3の国内での事例研究は,北海道小樽市延おける歴史的環境を利用した観光開発を取り上げ,運動関係者と行政担当者への体索的なヒアリング(聞き取り)調査を実施した。また,市内の400棟近い建造物の定点観測を行い,町並みの変遷を記録し,データベース化した。 次年度は,アメリカにおける現地調査を行う予定である。
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