研究概要 |
研究第3年目にあたる2009(平成21)年度は,主に(1)日本国内事例の継続調査,(2)アメリカにおける歴史的街区(historic districts)に関する文献解読および現地調査研究,の2本の柱を中心に研究を行った。 第1の柱である国内研究は,今年度も北海道小樽市での定点観測を継続して実施した。観光客でも地元客でもない人々を「近郊客」という形で概念化し,彼らの町並みに対する影響力についても考察した。昨年に引き続き,市内の約400棟の建造物の定点観測をデータベース化した。このようにして1997年以降,継続的にデータを蓄積してきている。 第2のアメリカでの研究は,アメリカ・ミズーリ州セントルイス市内での歴史的建造物の取り壊し事件の継続ヒアリングも実施した。現地での関係者への再聞き取り,裁判の進行状況に関して詳細なヒアリングをすることができた。また、アメリカの保存制度の大きな柱である「歴史的街区」のいくつかを視察した。南部の諸地区(Charleston, South Carolina ; Savannah, Georgia, etc.)に典型的に見られるように,最初期のそれは極めて事大主義的・愛国主義的であったが,時代とともに歴史的街区は「当該地区の特徴的な性格」を保存するという「コミュニティ保存」へと展開してきている。その変遷をたどる調査を実施することができた。 次年度は,こうした論点をさらに調査研究していきたいと考えている。
|