新型インフルエンザの影響で実施が遅れていた研究II(縦断研究)の中国の2年目の測定を実施した。4歳と6歳児を対象に、子どもの葛藤処理方略の測定、親との相互交渉の観察、親自身の葛藤処理方略、子どもに対するしつけについて面接調査を行った。研究1(横断研究)では、子どもの葛藤処理方略を質問紙で測定していたが、各文化における回答の標準値を求める必要があると判断し、日中韓米の各300名大学生を対象とした質問紙調査を実施した。 日中韓の3ヵ国で、縦断データの初年度分を用いて、子どもの葛藤処理方略の分析を行った。その結果、3歳児の葛藤処理方略には文化差は大きくなかったが、5歳児では文化差が認められるようになった。互いに意見が違うときには、どの文化の3歳児も、自己への強い関心を示した。韓国では5歳でも自己への関心が強いままだが、中国では他者への関心を強めるようになった。一方、日本の5歳児では、特定の方略を用いることがなくなり、結果として自己への関心が弱まるが、他者への関心を強めるわけではなかった。この結果は、文化の違いが3歳から5歳の時点で分化することを示すもので、この研究ではじめて明らかになったものである。この結果は、現在投稿準備中である。 日中韓の母子葛藤場面の分析を行った。3ヵ国の親の社会化方略には共通性とともに、文化差と年齢差が認められた。同じ方略でも、親子の関係への配慮の仕方が文化間で異なることが明らかになった。一方で、親の回答の多様性から、3ヵ国とも伝統的価値観が揺らいでいる可能性が示唆された。
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