研究概要 |
本研究では,北マリアナ諸島で最も活発な噴火活動を行っているアナタハン島で地震,測地,地質・岩石学的立場から総合的な観測・調査を進め,噴火状態を火山学的に評価し,噴火を引き起こしたマグマの蓄積・移動過程などのマグマ供給の仕組みを明らかにするとともに,北マリアナ弧におけるアナタハンのマグマ活動の位置づけを,造構場と岩石学の立場から理解することを目的とした. アナタハン島において昨年から継続している地震観測のデータ回収および撤収を行い,これまでも繰り返しているGPSのキャンペーン観測を実施した.また,火山活動の目視観測と火口地形の観測および火山岩試料の採取を実施した.引き続いてそれぞれのデータ解析を行った.2008年夏を除いて火山活動によると思われる地震活動はほとんど認められなかった.2008年夏に捉えられた連続微動は火口の直下を震源にして起きており,その震源での波形特性は水蒸気爆発的なものに近い.地殻変動は小噴火時に浅所で開講割れ目ができたことを示すものの西側地下ではそれを上回る量の収縮を示し,さらに2009年も収縮を続けている.一方,2003年からの活動は均一組成の安山岩マグマによって引き起こされたと考えられる.噴出物量・火口拡大量の比較および噴出物の構成物からは,2005年以降の噴出物はほとんどが基盤の岩石を吹き飛ばす水蒸気爆発で特徴づけられる.火山活動は2008年夏以降にわずかの量の灰噴火を除いて噴火活動は観測されていない.以上の地震や地殻変動等のデータと解析結果に基づき,2003年から継続していた火山活動は一旦終息したと考えることができる. 今回の研究の成果を2009年4月アルゼンチンで開催された第3回国際マール会議,および,同年12月サンフランシスコで開催された米国地球物理学連合秋季大会で報告した.
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