研究概要 |
本研究では、中央海嶺系における海底拡大プロセスを規定する要因としてマントル組成(特に揮発性成分と液層農集元素量の変化)に着目し、これらの変化によってメルト供給量(地殻の厚さに対応)がどのように変化し、さらにそれが中央海嶺の構造と拡大様式にどれだけ影響するかを定量的に明らかにすることを目的とする。20年度は、当初は2回目の調査航海を実施する予定であったが、世界的な油価高騰により航海が1年延期となったため繰り越し申請を行い、21年度に航海を実施した。 1.H20年度航海結果の解析:「白鳳丸」KH07-4航海で得られた各種データの解析を行った。地形・地磁気・重力マッピングの解析からは、メルト供給量の変化を示す特異な地形が発見されたほか、重力解析から地殻の厚さが時空間的に変化していることを明らかにし、さらに磁気異常解析結果をもとに拡大過程を詳細に検討した。地震計観測からは、拡大軸に対して非対称な地震波速度構造が明らかになったほか、自然地震の震源分布の解析をあわせて行っている。採取した岩石に関しては、全岩化学分析を行い、さらに微量元素および同位体の分析に着手した。航海速報は5月の地球惑星連合大会で、各データ解析結果はInterRidge-Japan研究集会(10月)と米国地球物理学会(12月、サンフランシスコ)で発表された。 2.海底電位差磁力計の回収:昨年度設置した海底電位差磁力計は電池の制限から今年度中の回収が必須であった。年度当初計画されていた航海が延期になったため、急遽東京海洋大学の練習船の協力を仰ぎ、連携研究者が同船に乗船してH20年12月に全6台を無事回収した。データが観測全期間収録されていることを確認し、解析に着手した 3.第2回調査航海の実施(H21年度、繰り越し申請分):平成22年1月に「白鳳丸」KH09-5航海を実施し,H20年度航海においてデータ未取得の海域における地形・地磁気・重力調査、および研究調査海域全域でのドレッジによる岩石採取を実施した。
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