研究概要 |
本研究計画の目的は,1999年台湾集集地震の際の大きなすべりによる摩擦熱が残留しているかどうかを確かめるため,車籠埔断層を横断する温度プロファイルを得ることである.この目的を達成するため,断層の南部分に位置する南投市に昨年度250mのボアホールを掘削した.ここは地震発生の1年後に大きな温度異常が発見されたのと同じ場所である. 5月7日から9日に,このボアホールの深さ200 mまでの温度測定を行った.得られた温度プロファイルでは,地表から深さ70 mまでは24.5度に減少し,ここから地下200 mまで単調に25度まで増加した.また,連続観測のための温度計も設置した. 10月1日から2日に,このボアホールにおいて2度目の温度プロファイルを得た.この温度プロファイルからは,断層付近での明確な温度上昇は見られなかった.これは,過去にこの地層で測定された温度異常は永続的なものではなかったという点で,重要な観測結果である.連続測定からは,ボアホールの掘削そのものが温度プロファイルに与える影響が120日程度で減少することがわかった.この間の温度変化は約0.05度であった.この知見は,将来の地震断層研究において,掘削作業からの回復時間を見積もるために重要である.
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