研究課題/領域番号 |
19404001
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 秀重 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 教授 (70187970)
|
研究分担者 |
渡邊 泉 東京農工大学, 大学院・共生科学技術研究院, 准教授 (30302912)
加藤 義久 東海大学, 海洋学部, 教授 (00152752)
|
キーワード | 熱帯アジア / 汚染史 / 柱状堆積物 / 有機塩素系農薬 / DDT / 多環芳香族炭化水素 / ポリ塩化ビフェニル / トンキン湾 |
研究概要 |
2008年度は前年度に予備調査を行ったベトナム(トンキン湾)において堆積物の採取を行った。日本から輸送したコアラーをベトナムでチャーターした船に搭載して柱状堆積物の採取を行った。トンキン湾の水深20m前後の海域で合計4本の柱状試料が採取できた。採取されたコアの長さは25cm〜40cmであった。コアは船上で5cm間隔でスライスして、一部をベトナムでの分析用にハノイ大学の研究者に渡し、残りを日本に持ち帰り分析した。日本に持ち帰った堆積物試料は凍結乾燥した。凍結乾燥した試料を加圧溶媒抽出装置を用いて有機溶媒で抽出し、抽出液を2段階のカラムクロマトグラフィーで分画・精製した。精製された画分を電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラフでポリ塩化ビフェニル(PCBs)と各種有機塩素系農薬の分析を行った。 トンキン湾のコア中のTotal PCBs濃度は最大でもl.6ng/g-乾燥泥とコア全層に渡って低濃度であった。この濃度は東京湾のコアにおける濃度よりも2桁低濃度であり、ベトナムにおいては過去から現在に渡ってPCBsがほとんど使用されていないことが示された。このことは二枚貝や海岸漂着プラスチック小粒などの他の環境媒体によるモニタリング結果と調和的である。有機塩素系農薬の一種であるDDTとその分解産物であるDDD,DDEの比率を計算することにより、過去に使われたDDTの残留と最近のDDTの負荷の識別を試みた。コアの表層部分においてDDTの割合が50%以上であり、最近のDDTの使用が資された。この結果は海岸漂着プラスチック小粒によるモニタリング結果とよく符合しており、近年ベトナムにおいてDDTを含む農薬が使われていることが示された。その他の有機塩素系農薬は全般に低濃度であった。 昨年度までに分析した熱帯アジア各国の堆積物中の多環芳香族炭化水素の起源推定に関する論文を国際誌(Marine Pollution Bulletin)に投稿し、掲載された。
|