中国の首都である北京市は、人口1400万人を抱える中国の政治、文化、科学技術、教育の中心であり、世界の主要都市の1つである。中国内陸部の重慶、成都と言った重工業都市とは異なるが、人口、自動車の集中により深刻な大気汚染が問題となっており、大気粉塵濃度は、平均値で157μg/m3と極めて高く、日本の環境基準値である100μg/m3を大幅に超えており、東京、大阪、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール等の世界主要都市の大気粉塵濃度と比較しても4、5倍近く高い状況にある。北京市の大気汚染の原因は、春季の砂漠地域からの黄砂の飛来と言った自然現象も含まれるが、その多くは、生産・生活のエネルギー源としての石炭燃焼、自動車の排気ガス(自動車総数、190万台、2003年1月現在)によるところが大きい。そして、2008年のオリンピックの開催に向け歴史的な都市改造を進めている北京市において、3カ年長期的・効率的な大気観測を継続的に行うことで、2001年から継続的に行ってきた観測成果と合わせて、2000年代10年間の北京市大気環境の動向を解析し、有効な環境対策を提案できる精度の高い環境影響評価手法の確立を本研究の目的とする。 本研究では、長期的な大気観測に基づき、"中国北京市における大気環境の動態解析と発生源の推定"を行い、重点環境改善都市として大気汚染の改善に向けて行われる北京市当局の環境対策について、科学的・客観的評価を合わせて検討する。具体的には、平成19年度は、清華大学の賀教授の協力の基に、以下の研究課題を効率的良く進めてきた。 1)中国北京市における新たな大気観測システムの構築(田中、賀担当) 2)中国北京市での大気観測(田中、奥田、賀担当) 3)中国北京市での発生データの収集と解析(賀担当)
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