英国での下水処理場下流でRoachの間性化がかなりの割合で見つかったが、わが国では明らかな間性化を起こしている野生コイはわずかしか見出されていない。これまでの報告では、日英での魚類の間性化には大きな相違が、どのような原因に基づくのかが大きな関心であり、1)下水処理方式と位置の相違(下水処理方式)2)エストロゲン排出量の相違3)希釈率(河川流域の降水量と河川勾配の相違による水文状況)4)河川での分解性(流下時間、水温、DOなどの相違)5)魚類の感受性(コイとローチの感受性)が想定されるため、原因を客観的に明らかにすることを本研究の最終目的とし、研究期間では想定される相違のうち、物理的環境因子の相違を明らかにすることを目的とした。 平成20年度は1)分析技術:現地調査で固相吸着として前処理された試料を分析するため、分析方法を新たに開発し、遊離体と抱合体の前処理を簡易化し、回収率を大幅に改善させる分析法を開発した。2)現地実態調査として2008年9月に英国テムズ川流域での調査を行った。この結果、英国では夏季にも降雨があり、合流式下水道の越流水によるとみられるE2やグルンクロン酸抱合体のエストロゲンが放流水や河川水で検出され、合流式下水道越流水の影響が無視できないことが明らかとなったた。我国で検出されないEE2が流入、処理水で検出された。また河川や下水処理を模して遊離および抱合体のエストロゲンの生分解実験を行った結果、グルクロン酸抱合体よりも硫酸抱合体が、またE2やE1よりもEE2は分解が遅いことが明らかになった。下水道を介したエストロゲンの流域流出のプロトモデルを作成した。
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