研究概要 |
本研究では、セミパラチンスク核実験場周辺住民の長期低線量率放射線被爆の健康・リスク評価を行うための基礎として、できるだけ正確な被爆線量を評価することを目的としている。今年度は、1949年の旧ソ連最初の核実験で被害を被ったドロン村周辺できめ細かな土壌試料サンプリングを行い、核実験からの放射性雲の通過したセンター軸や汚染の広がりを推定し,より正確な住民被爆線量を評価できるデータを提供した。併せて、ヨウ素-129の測定を初めて試み,甲状腺被爆線量評価のためのデータも蓄積した。また,予備ではあるが、水爆の影響を受けた南方面のサルジャール集落周辺も調査して,以下の主な成果を得た。 1)ドロン村周辺において、土壌に残留しているCs-137やPuがガウス分布に似た形で分布していることが明らかになり、放射性雲の通過センター軸,幅を決定することができた。これにより、ドロン集落内外でのより正確な被爆線量推定が可能になった。 2)核実験場周辺で今回初めてI-129濃度レベルを評価することができ、今後の甲状腺被爆線量評価に役立つデータを提供した。 3)南のカラウル方面も含めてサルジャール集落周辺で土壌中の残留放射能(50地点以上)を測定した。これにより、集落周辺を通過したおおよそのセンター軸,広がりを推定し、来年度に向けての更なる調査研究の足がかりを構築した。
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