研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続きセミパラチンスク核実験場周辺集落、特に1953年の旧ソ連最初の水爆で影響を受けた南方面の集落(サルジャール、カラウル)を中心にきめ細かな土壌サンプリングを実施し、放射性雲の通過したセンター軸の位置,幅、さらに降下量の推定に取り組んだ。さらに、誘導放射性核種Eu-152,Co-60,水爆の規模、材料、組成などの知見を得るためにNp-237、U-236の測定も試みた。 その結果、(1)サルジャール、カラウル集落内外で土壌中のCs-137やPuがガウス分布に似た分布で蓄積していることが分かり、より正確な放射性雲の通過センター軸、幅、集落内での放射性物質の降下レベル等を評価することが出来た。また、(2)誘導放射性核種Eu-152,Co-60に関しては、化学分析-尾小屋地下極微量放射能測定室で測定することにより、両集落内外でこれらの核種を検出することが出来た。さらに、(3)水爆の材料等の知見を得るために測定を試みたNp-237およびU-236に関しても、化学分析-ICP-MSおよび化学分析-加速器質量分析計(AMS、オーストリア・ウイン大学)を使用して貴重なデータを得ることが出来た。 これらは、両集落の住民の外部・内部被曝線量を推定する上で需要なデータとなる。特にNp-237,U-236については、この地域で初めて検出されたデータであり、水爆の規模評価に役立つ。現在、これらのデータをベースにして、被曝線量評価モデル等で線量評価を進めている。
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