「ヘリテージ・ツーリズム開発による地域発展の条件は、遺産の本質的価値の真正な継承と地域社会(local community)の持続的な発展の相互補完による実現である」とする研究仮説を検証するため、おもにフィジー諸島共和国旧首都レブカについて事例調査を進めた。 具体的には、昨年度からの都市史調査、建築調査及び地域社会調査を継続して実施し、遺産の本質的価値および遺産マネジメントにおける地域社会のポテンシャルおよび政府や自治体との間に生じてる問題と課題を明らかにすることができ、ヘリテージ・ツーリズム開発における資源の把握と持続的な発展のための課題が明らかにできた。 また、調査計画が予定よりも早く進捗したため、本研究の対象地に共通する遺産と地域社会との関係性を総合的にとらえる概念としてのリビングヘリテージに関する研究に新たに着手し、当該概念の遺産マネジメントに対する適用可能性について、ヨルダン王国サルト市や長崎県神代小路についても新たに対象事例に加え、フィールド調査を実施した。これについては、今年度時点において、本概念を「人の暮らしの中で生み出されたモノやコトの総体としての地域を文化遺産として包括的にとらえる概念であり、現在も人々の生活とともにあり、地域コミュニティに意味合いをもたらし続ける文化遺産」とする研究仮説を得た。 以上の成果は、日本建築学会において系統的に発表した。
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