研究概要 |
本研究では,タブリーズ市において歴史的価値が高い建造物として有名なタブリーズ城とキャブード寺院を対象として,アナトリア断層を想定地震断層と仮定した耐震診断を行うとともに,耐震補強法について現地の研究協力者と調査研究を行うことを目的としている。 8月に約1週間に亘り研究代表者,分担者,研究協力者で現地調査を実施した。昨年に引き続き,建造物の直近と最上部,中間部に高感度速度センサーを設置し,常時微動計測を行ない,建造物の動特性把握を試みた。その結果,建造物の1次固有振動数,2次固有振動数を把握することができた。昨年実施した地盤の常時微動計測結果と比較すると,キャブード寺院の方がタブリーズ城よりも建物の1次固有振動数が地盤の卓越振動数に近いが,地震時に地盤と建造物が共振するほどその値は近くはないことが明らかとなった。また,多方向からのデジタル写真を合成して3次元映像を作成し,詳細測量を行う方法を試みたが,内部の光量や撮影上の障害物の制約から,よい結果が得られなかった。そこで,昨年に引き続き外観調査により現状での建造物の損傷程度の把握を建造物表面から調査を行った。 以上の成果を総合的に判断して,何らかの耐震対策が必要であると考えられたので,わが国でこれまでに行われた組積造的建造物の耐震補強工事事例を調査し,取りまとめて現地の研究協力者に示すとともに,対象としている建造物への適用の可能性について現地の研究協力者と議論した。
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