パリ市でデコー社が運営するベリヴが事業を開始し、我が国でも広く報道されたが、ジャーナリズムの報道は、公共の貸自転車程度の扱いであった。この年、事業を行うフランスの広告会社Decauxからインタビューを受付ける連絡があり、パリで取材を行った。同じく仏のレンヌや、西のバルセロナでコミュニティ・バイシクル事業を展開する広告会社Clear-Channelも取材を受付ける連絡があり、バルセロナとオスロの施設を訪問した。この結果、広告料への依存度が都市によって異なることや、都市の景観規制により自転車事業が様々な制約を受けており、広告規制地区で規制免除をうけた広告の価値が高いこともわかった。また、ドイツのCalla bikeは、フランスのDecaux社事業の成功をうけて、次第に事業手法を似たものに変更していることや、システムの長所短所を理解しつつ、改善方法を考えていることが、ベルリン本社におけるインタビューで理解できた。イタリアでは市営によるビチンチッタという事業が北部複数都市で展開しており、ドイツではベンチャービジネスによるNext bikeも実施都市をかなり増やしている。また、公共の費用と僅かな広告料で実施している北欧の自転車事業は、一部で破綻もしくは休業状態となっていた。公的な交通サービスのうち、財源が広告料モデルの自転車事業において持続可能性が高く、支出のみの自転車モデルは、維持管理、人件費などの問題で立ちゆかなくなることを示している。欧州の公共交通は、交通税(仏)、地方財源法による税交付(独)、公共料金の売り上げから補填(奥)などでわかるように財源のかなりの部分を税に頼って存続している。たとえ自転車事業であっても、コミュニティ・バイシクルのような公的なサービスでも事情は同じであり、広告料モデルもしくは税による補助で維持する工夫をしないと、事業は続かないことを学んだ。
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