研究分担者 |
齊藤 誠一 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (70250503)
帰山 雅秀 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (80305937)
工藤 秀明 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (40289575)
矢部 衞 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (80174572)
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研究概要 |
最終年度の取りまとめとして,2007年の劇的な海氷後退およびそれに関連した海洋の物理的・化学的環境の変化に対する,基礎生産過程,動物プランクトン,底棲生物および魚類のバイオマスや多様性の変動を中心に解析を行った.また,2010年2月には,招聘した海外共同研究者(米国および韓国)および他の海洋調査参加者が参集し,おしょろ丸による北極観測航海成果に関するワークショップを開催し,環境変動に対する海洋生態系の応答過程について議論を行った. 衛星リモートセンシングを利用した基礎生産過程の研究では,過去数年間の優占植物プランクトンサイズとクロロフィルaバイオマスの経年変化をまとめ,海氷が最も後退した2007年には,それ以前よりも小型の植物プランクトンが優占していたことが明らかとなった.しかしながら,現場において局所的に基礎生産および種組成を見ると,それぞれの場所で異なる応答をしていることが示された.また,2007年の動物プランクトンのバイオマスと多様性は1991年,1992年,2008年に比べ共に高く,太平洋種のチャクチ海への流入が確認された.魚類に関しては,採集用具の形式やサイズ等の違いにより比較が困難であるが,底棲魚類の種に大きな変動は認められなかった. 以上の成果は,海氷の激減は低次生産過程に短時間のうちに直接的に影響を与えているが,さらに高次の生物はそのような短い時間スケールで明確な応答は示さないことを示唆するものであり,観測・評価方法を改良しつつ今後の長期にわたる当該海域の監視が必要である.
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