研究概要 |
本年度は,インドシナ半島から地理的に離れたフィリピンにおいて,湖沼養殖場および養殖場から流下する河川と沿岸海域にかけてサンプリングを行い,抗生物質汚染と薬剤耐性菌,耐性遺伝子の発生をモニタリングした.このことで,おなじ熱帯アジアでもインドシナ地域との違いを明らかにすることができる.一方,当初予定していたタイでのサンプリングは現地の政情不安とカウンターパートの出産があり実施できなかった.フィリピンの調査の結果,養殖場の多いラグナ湖からパッシグ河ではサルファメトキサゾール(SMX)が8~94ng/Lの濃度で検出され,マニラ湾の沖合では汚染は低かった.SMX耐性菌は10~87%と高率に検出された.マニラ周辺でのサルファ剤の使用が明らかになり,これはインドシナ半島と類似した結果であった.一方,オキシテトラサイクリン(OTC)は検出限界以下の場所が多く,耐性菌も0.07~3%と低かった.本年度はマニラに大洪水が起こったため薬剤の希釈が考えられたので,次年度は同時期に洪水のない場合の調査を行いたい.現在種々の環境ファクタとの相関およびSMX耐性遺伝子の解析を進めている.次年度は最終年度なので,インドシナの結果およびフィリピンの結果をまとめて発表する予定である.本研究の成果は,今後養殖場での薬剤使用に警鐘をならし,また病院や養豚場での耐性遺伝子の発生と環境への放出,およびその遺伝子の様々菌種での残存を明らかにできるため,社会的にも有意義な成果である.
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