研究課題
最終年度にあたる平成22年度は、唯一定量化が難しかった定点音響観測結果を用いた個体密度推定モデルを構築した。貨物船などの移動型プラットフォームを用いる観測では、同一個体を二回観測することはない。一方、定点観測においては、同じ個体の二重カウントを原理的に防げない。2個体が一回ずつ観測されたか、同一個体が二回観測されたかを野外で判別することは、音響に限らず目視を含むあらゆる定点観測手法に共通の問題である。そこで、これまでに蓄積した2年間にわたる定点観測データに加え、個体の発声頻度を計測するための音響バイオロギング手法を組み合わせた。動物一個体が発する音声の頻度から検出確率を算定し、音響伝搬モデルから検出範囲を求め、定点観測での受信頻度を動物の生息密度に換算するモデルを構築した(米音響学会誌128,1435-1445)。餌生物や環境水温は、鯨類の動態を決める大きな要因である。平成22年度は長期定点音響観測を行ってきた長崎県大村湾口におけるスナメリの出現状況と当該海域の主要漁獲種であるカタクチイワシの漁獲推移を比較し、スナメリの季節的な出現様式を決める要因を明らかにした(Marine Biology 157,1879-1887)。本研究で用いた音響データロガーは、現在、台湾西部海域、トルコのボスポラス海峡、ドイツの北海沿岸で連続稼働中であり、共同研究を継続する。さらに、調査協力要請があるインドのブラマプトラ川水系のガンジスカワイルカ、ブラジルのアマゾンカワイルカ、香港のシナウスイロイルカ、インドシナ諸国を流れるメコン川に生息するカワゴンドウなどの観測にも積極的に対応し、科研費で開発された手法を小型鯨類の保全に役立ててゆきたい。
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Biology, Evolution, and Conservation of River Dolphins within South America and Asia.
ページ: 343-355
J.Acoust.Soc.Am
巻: 128 ページ: 1476-1482
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