研究課題
本研究は、マレーシア半島の熱帯多雨林において林冠葉群三次元構造を記述する手法を確立することを目的とし、野外調査とリモートセンシング技術の二つの手法を用いた。まず、野外調査データから個体の樹冠構造の集合としての林冠葉群三次元構造の記述を行うために、多種に渡る種間比較と種内での各生育段階における樹冠形態特性を検証した。調査区内に生育する約34万本の幹直径データに加え、200樹種4000個体の樹木の樹冠構造を測定し、樹冠構造の樹種問変異に、種特異的なサイズ構造と最大サイズが強く関連していることを明らかにした。さらに、推定パラメータを用いた林分構造の推定式を構築し、実測値との比較による推定式の有効性の検討をした。その結果、種特異的なサイズ構造と最大サイズを組み込むことで実測値に近い林分構造を推定できることを示し、地形などの他の要因による影響の可能性を示した。次に、リモートセンシング技術(空中写真や航空機搭載型レーザー測器)による林冠三次元構造測定の精度及び林冠構造の空間的変動と林冠内部構造との関連性を検討した。その結果の林冠層の高さ及び地表面の空間変動、亜高木・低木層の空間変動や林冠構成種の葉群量がレーザー測量によって推定可能であることを明らかにした。この結果、複雑な構造を呈する熱帯林における林冠の時空間的構造や地上部の現存量の増減の推定に対するレーザー測量が有効性を示し,林内構造の変動については森林内部からの測定を同時に行う調査の必要性を示した。上記の2つのアプローチで得られた結果は、個々の樹冠形態と林冠葉群三次元構造を繋げるためのプロセスに重要な要素を提示するものである。今後、これらのアプローチ結果に加え、近年までに蓄積されたデモグラフィックデータを加えることでより緻密な林冠葉群三次元構造の動的な記述を行うことが可能である。
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