本研究は、熱帯沿岸生態系の主要な構成要素である海草藻場を対象に、津波に代表されるカタストロフィックな大規模撹乱と局所的な環境改変の複合効果が生物群集に与える影響を解明することを目的とする。この目的を達成するため本年度は下記の研究調査を行った。 1、 海草藻場およびベントス群集の長期変動および遷移過程の追跡 : 現地調査を平成21年2月に、2001年より継続調査している6定点で行った。その結果、2004年の津波による撹乱から海草類およびベントス群集が引き続き回復しつつあることが明らかになった。 2、 海草藻場環境の野外調査 : 上記の海草藻場周辺の多数の堆積物底において採水・採泥を行うと共に、海草類の安定同位体および光合成活性を測定した。その結果、海草類の生産性が、堆積物の撹乱状態およびその安定性と密接に関連していることを示す予備的なデータが得られた。 3、 リモートセンシングによる海草分布の広域変動様式の現地計測 : 海草藻場において無人気球による高解像度空中写真の撮影を行った。得られた画像は、昨年度のカイトフォトグラフによる撮影結果、および過去の航空写真と合わせてGIS化して、海草の広域空間構造の変化について解析する予定である。 4、 コア採集による堆積物環境の時間変動の解析 : 海草藻場の堆積履歴を明らかにするための大型コアラーを製作し、東京湾富津干潟のアマモ場において試行調査を行った。その結果を元に、観測機器の改良を行うと共に、熱帯性海草藻場における採集、解析の方法を検討する予定である。
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