研究課題
本研究は、熱帯沿岸生態系の主要な構成要素である海草藻場を対象に、津波に代表されるカタストロフィックな大規模撹乱と局所的な環境改変の複合効果が生物群集に与える影響を解明することを目的とする。この目的を達成するため本年度は下記の研究調査を行った。1、海草藻場およびベントス群集の長期変動および遷移過程の追跡:現地調査を平成22年1月に、2001年より継続調査している6定点で行い、長期データの収集を継続した。来年度の調査の後に、津波発生前後10年間の変動様式の解析を行う予定である。2、海草藻場周辺の環境条件の観測:上記の海草藻場の観測定点の周辺海域にて採水および採泥を行い、環境諸条件の変動を観測した。本結果についても上記項目と同様に来年度の調査の後に、津波発生前後10年間の変動様式の解析を行い、海草藻場の変動との関連性を解明する予定である。3、コア採集による堆積物環境の時間変動の解析:大型コアサンプラーによる海草藻場堆積物の大深度掘削を実施し、深度2mに達する堆積物の採集に成功した。現地における観測の結果、堆積物の層状構造は津波の影響だけでなく、アナジャコのような潜孔性生物による局所的撹乱や、モンスーンに伴う季節的な波浪による撹乱などの複合的な効果を受けて複雑に変動することが判明した。今後、堆積物の元素解析・同位体解析を進めることにより、海草藻場の埋没過程とその後の物質循環への影響を評価する予定である。4、リモートセンシングによる海草分布の広域変動様式の把握:昨年度までに現地で撮影した気球写真、航空写真をGISを用いてデータベース化するとともに、高解像度衛星画像(ALOS、JAXA)を用いた海草藻場の空間分布判別の予備的解析を行った。その結果、これらの異なるソースの画像を組み合わせることにより、海草藻場の広域長期変動について把握することが可能であることが明らかになった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Estuarine, Coastal and Shelf Science 87
ページ: 246-252
Biogeochemistry (印刷中)
アマモ場の生物多様性と機能.エコロジー講座3 なぜ地球の生きものを守るのか(日本生態学会編)(文一総合出版)
ページ: 6-17