研究課題
ナンキョクブナ属植物は、その分布パターンからゴンドワナ大陸に起源した植物群-すなわちゴンドワナ植物と考えられてきた。しかし、分子系統学的解析を含むこれまでの研究結果からは、ナンキョクブナ属の現生種は決して遺存的なものではなく、ゴンドワナ大陸が成立していた年代よりも後に生じたことが明らかになっている。また、その種分化パターンに関しても、それぞれの大陸・地域の種群で単系統にならず、大陸・地域間での移動が複数回起こったことが明らかになっている。本研究では、南半球に隔離分布するナンキョクブナ属植物をめぐる複数の共存系を対象に多様な生物が織り成す共存系の進化史解明を目指している。本年度はゴンドワナ大陸の一部であったアフリカ大陸の南アフリカおよび、南米大陸に隣接する中央アメリカのメキシコでの調査・研究を行った。この両地域は、現在はナンキョクブナが分布していないが、分布地域と密接な関係のある地域である。この両地域にて、他地域でナンキョクブナを利用している昆虫類の近縁群の採集を行い、南米、オセアニアの種といっしょに解析を行ったところ、以下のことが明らかになった。1)ナンキョクブナを利用するゾウムシ類は、各地域でそれぞれ独立に利用する群がでてきた。また南米では、ニュージーランドに比べて種の多様性が低い。2)チョウ目昆虫では、ニュージーランドとオーストラリアなどのオセアニア地域との比較で、近縁なナンキョクブナ属植物では、同属の蛾類が利用しており、大陸間の移動が起こっていると推定される。この結果は蛾類のCOI遺伝子の配列に基づいた系統樹とナンキョクブナ属植物の分子系統樹の比較解析でもサポートされた。
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