研究課題
本研究ではプレインカからインカ帝国形成期の人骨試料の形態学的な研究とDNA分析を同一試料に対して行うことによって、DNA研究からの集団の系統関係の解明と、形態学的研究による古代社会の復元を目指す。更にこれに考古学的な研究から得られた知見を統合することによって、古代アンデスに成立した様々な文化とそれを担ったヒト集団の関係について考察することを目的とする。本年度は3回の現地調査を行った。研究の進行状況は以下の通りである。(1)すでに収集済みの南海岸の遺跡から出土した人骨の分析を行い、紀元前からインカ時代までの南海岸地域における集団の変遷について、予備的な結論を得た。更に詳細に分析するために12月に現地調査を実施し、新たなサンプルの採取を行った。(2)インカが首都をおいたクスコ周辺には、マチュピチュを始めとする様々な遺跡が点在する。これらの遺跡とクスコとの関係と、インカ帝国そのものの成立を人類学的に考察する目的で、9月にクスコ文化庁が所蔵するサクサイワマン遺跡およびワタ遺跡から出土した人骨の調査を行った。サンプルについてはペルー政府の正式な輸出許可を得て年度末に日本へ輸送した。現在分析中である。(3)北海岸のモチェ文化とガイナッソ文化を担った集団の関係と、モチェとそれに続くシカン文化への移行に伴う集団の変化を解明する目的でのサンプリングを行った。具体的には2006〜7年度に発掘されたトルヒーヨの月の神殿のサンプルの採取を行った(12月)ほか、すでに日本への輸出を完了している2006年度に行われたシカンのロロ神殿西側の発掘によって得られた人骨について、DNA分析を中心とした解析を進めている。(4)すでにサンプリングを終了しているリマ周辺の宗教センターパチャカマク遺跡から出土したミイラの系統解析を進めている。(4)すでにサンプリングを終了しているリマ周辺の宗教センターパチャカマク遺跡から出土したミイラの系統解析を進めている。
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Anthropologieal Science 115
ページ: 227-232