研究概要 |
主成分分析を圃場内,年次内,圃場X年次で行ったところ,全ての組み合わせにおいて第一主成分では穂数と一穂籾数は相対しているため,穂数型一穂重型をよく説明しているものと判断された。一方,第二主成分に関しては登熟歩合の係数が常に大きいため,穎花の充実程度を示しているものと判断される。Finlay-Wilkinsonの解析で優良品種となった品種群に関しては,一貫して一穂籾数の大きい側に属しているものの,その他の品種群に関しては必ずしもそうではなかった。また,低収を示した品種群に関しては穂数型の品種と判断され,Finlay-Wilkinsonの解析とよく一致した。 Finlay-Wilkinsonの解析から、全体的に低収となる劣悪環境で高い収量を示した品種群があることが分かった。それらについては、穂数および一穂籾数の関係に明瞭な傾向はないが,登熟歩合が他の品種に比べて高かった。さらに、品種の中には千粒重も平均以上を示したことから、登熟過程における生育が収量に影響を与えており、低収となるような劣悪環境で収量を維持するためには、登熟歩合の向上は必要であるものと判断された。 さらに、各品種の収量の回帰直線と各圃場における全品種の平均収量の回帰直線との位置関係を見ると、平均収量の回帰直線より各品種の回帰直線が常に高い (a)、平均収量の回帰直線より各品種の回帰直線が常に低い (b)、各品種の回帰直線と平均収量の回帰直線が交叉し低収の環境では品種収量が高い (c)、2つの回帰直線が交叉し低収の環境では品種収量が低い(d)および平均上(e)といった5つのグループに大別できた。供試した品種を大別すると,aには5品種,bには8品種,cには6品種,dには7品種およびeには1品種となった。これらは、異なる自然環境における品種群の適応性の有無を表しており、今後の品種導入の際の基盤情報となった。
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