マレーシア・サラワク州ルボックアントゥの丘陵地では、イバン人によるゴムやコショウの換金作物栽培が半世紀以上にわたり焼畑と共存してきた。また、農民自身により、あるいはサラワク土地統合再開発公社(SALCRA)による事業として油ヤシが栽培されている。丘陵地における換金作物栽培を支えてきた基盤や問題点、展望を土壌肥沃度論的見地から明らかにすることを目的に、平成19年8月20日〜9月5日、11月7日〜12月22日、平成20年3月4日〜3月17日の計3回、ゴム、コショウ、油ヤシ園の圃場調査・土壌試料採取を行った。同時に、栽培管理や収量などについて、聞き取り調査を行った。採取した土壌は、日本に輸出し、土壌肥沃度分析に供試した。これらの結果を、我々がこれまでに得てきた焼畑二次林の研究結果と比較検討した。ゴム園では、土壌酸性が強く、養分に乏しく、焼畑二次林と類似した土壌肥沃度であるが、コショウ園や油ヤシ園では、施肥により養分、特にリンが土壌に蓄積する方向に変化していることが明らかとなった。コショウ園では、窒素肥料が硝化を受け、急速に失われている可能性があることが分かった。また、コショウ園では、侵食対策はとられておらず、過剰な施肥にともなう土壌養分の流亡が懸念されるため、適切な圃場管理法の開発が必要であると考えられた。油ヤシ園では、コショウ園ほど養分の増加は認められなかったが、更新時にも施肥成分の残留が認められたことから、次回植栽時の施肥管理は、その影響を考慮する必要があると考えられた。
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