研究概要 |
本年度は,次の3つの項目について,現地調査・試料採取および分析を行った. 1、二次林の初期遷移と土壌肥沃度:東南アジアの丘陵地の多くでは,Imperata cylindrica草原の拡大が深刻な問題となっている.一方,サラワク州の休閑二次林では,植生遷移の初期に,I. cylindrica,またはシダ類(Dicranopteris lineari)が優先している.現代型の集約化した焼畑では,このような草地を焼畑として利用することから,本研究では,土壌生態学的観点から,それらが優先する休閑地の特徴づけを行った.その結果,土壌肥沃度はI.cylindrica草地の方が高いが,植生バイオマスはD.linearis草地の方が大きく,火入れ時に多量の灰添加が期待できること,しかし,後者はその厚いルートマットが火入れや稲作付けの障害となるため,現地農民は前者を好んで焼畑地に利用していることを見出した. 2、休閑林土壌と天然林土壌との比較:一般に,休閑二次林は,年月の経過とともに,植生の多様性が増し,天然林植生に類似してくるとされている.土壌肥沃度も回復すると考えられているが,具体的に検証した事例はない.そこで,「休閑における土壌肥沃度の回復」とは具体的にどのような現象なのかを解明し,丘陵地農業における休閑の意義を明らかにすることを目的に,天然林が保全されているバタンアイ国立公園とその周辺のロングハウスの休閑林や焼畑地において,現地調査を行い,土壌試料を採取した.土壌試料は分析中である. 3、Acacia Mangium植林地土壌の肥沃度:サラワク州では、パルプ用材としてのA.Mangium植林地が急速に拡大している.植林地内の土壌肥沃度の現状を明らかにすることを目的に,十壌調査,試料採取を行い,試料は目下分析中である.
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