ベトナム北部(バクジャン省)の水田にて、夏季(2008年6〜9月)と春季(2008年2月〜5月)の水稲栽培時に田面より揮散するアンモニアフラックスを測定した。夏季においては80kg/haの窒素施肥に対して、揮散量は5.8〜8.6kigN/haであった(春季については測定未了)。すべての測定において窒素施肥1〜3日以内にアンモニアフラックスは最大値(最大で約20mgN/m2/hr)に達して、7日後以降はごく小さくなった。ベトナム南部(カントー市)の水田にて雨季(10〜12月)の水稲栽培においては窒素100kg/haの施肥に対してアンモニア揮散量は4.9〜7.3kgN/haであった。フラックス測定時に別途測定した、田面水の温度、pHおよびアンモニア態窒素濃度とアンモニアフラックスとの間には相関関係があり、(南部のサイトでR=0.745)アンモニアフラックスよりも測定が容易なこれらのデータからアンモニア揮散を推定できることが示された。 北部の試験圃場では、一方に堆厩肥を施用し他方に施用せずに等量の窒素肥料を施用したが、2つの処理間でアンモニア揮散量は有意差が見られなかった。南部では一方で通常の水管理を他方で節水栽培(Alternative Wetting and Dryingと呼ばれる)を行ったが、節水栽培の方が揮散量は多くなる傾向が見られた。これは節水栽培により田面水の水深が浅いため、施肥後の田面水中のアンモニア態窒素濃度が高くなったことが原因であった。 水田の窒素収支については、北部の試験圃場内にマイクロプロットを設けて、窒素安定同位体(N15)でラベルした尿素を施用した。今後試料の分析を行い、施肥窒素の作物への回収率、土壌中に残留した窒素の量を決定する計画である。
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