ベトナム北部(ハノイ市(旧ハタイ省))の水田にて、夏季(2008年6〜9月)と春季(2009年2月〜5月)の水稲栽培時にて、田面より揮散するアンモニアフラックスを測定した。夏季においては80kg/haの窒素施肥に対して、揮散量は11.5〜11.9kigN/haであった(春季については測定未了)。すべての測定において窒素施肥1〜3日以内にアンモニアフラックスは最大値(最大で約20mgN/m2/hr)に達して、7日後以降はごく小さくなった。 水田の窒素収支については、試験圃場内にマイクロプロットを設けて、窒素安定同位体(N15)でラベルした尿素を施用し、収穫時に土壌と稲(地上部)を回収して分析を行った。2008年春作(バクジャン省)においては施肥窒素(90kg/ha)のうち22.2kg/haが稲(地上部)、4.5kgがアンモニア揮散により大気へ放出され、土壌中に残留したのが6.3kg/haであり、未回収の窒素は57kg/haに達していた。一方、2008年夏作(ハノイ市)においては窒素施肥80kg/haのうち15.0kg/haが稲(地上部)、11.7kg/haがアンモニア揮散により大気へ放出され、土壌に残留したのが33.5kg/haに達していた。未回収の窒素は19.8kg/haであった。バクジャン省の試験サイト土壌は風化が進んだ砂質の多い土壌であり、ハノイ市の試験サイト土壌は粘土とシルトの多い沖積土壌であり、バクジャン省の試験サイトで未回収の窒素が多かったのは、溶脱による窒素損失が大きいことが考えられた。 1年目の結果であるカントー市(ベトナム南部)とバクジャン省(ベトナム北部)のアンモニア揮散の測定結果を論文にまとめてSSPN(Soil Science and Plant Nutrition)に投稿し、1回目の査読が終了し、受理に向けて前向きのレビュー結果をもとに修整原稿が審査中である。
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