研究概要 |
森林形成過程においては外生菌根菌(以下,菌根菌)の機能が決定的な役割を果たしていることが明らかにされている,日本で得た基礎的な知見がアジアの荒廃地の森林再生に直接役立つ訳ではない。そこで本研究課題では,アジアで深刻な問題となっている荒廃地において樹木の定着を促進する菌根菌を見つけることを目的としている。本年度は以下の研究を実施した。 1.熱帯フタバガキ林およびその火災跡地の菌根菌群集 インドネシア東カリマンタン州の熱帯フタバガキ林とその火災跡地において菌根を採集し,DNA解析によって菌種の同定を行った。火災の被害を受けていない熱帯フタバガキ林では,ベニタケ属やイボタケ科を中心とする多様な菌根菌群集が見られた。一方,火災の被害を受けた場所では,菌根そのものがほとんど見られないこと,萌芽再生しているCotylerobiumにはわずかではあるが菌根が見られること,菌種は無被害林と大きく異なることなどを明らかにした。 2.中国東北地方のアルカリ塩類土壌地域の菌根菌群集 伐採・過放牧によってアルカリ塩類土壌化が進行している荒廃地から採取した菌根を調べた。調査地の外生菌根性樹種はモンゴルヤナギのみであった。一般に酸性を好む外生菌根菌が多いが,pH10といった強アルカリ土壌でも菌根の形成が見られた。現在菌種をDNAによって同定する作業を行っているが,これまでにワカフサタケ属やアセタケ属が同定されている。
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