研究課題
森林形成過程においては菌根菌の機能が決定的な役割を果たしていることが明らかにされたが、日本で得た基礎的な知見がアジアの荒廃地森林再生に直接役立つ訳ではない。そこで本研究課題では、フタバガキ科の優占するインドネシア熱帯雨林とその火災跡地、中国東北地方で伐採・過放牧によってアルカリ塩類土壌化が進行している荒廃地を対象に学術調査を行い、どのような外生菌根菌が存在しているのかをまず明らかにすることを目的とする。昨年度までの解析により、インドネシアのフタバガキ林の主要な菌根菌種は同定されていたが、その宿主となっている樹木については不明なままであった。そこで、菌根から抽出したDNAから葉緑体DNAのシーケンスを行い、樹種の同定を行った。その結果、フタバガキ科樹木の優占率は約7割程度で、ブナ科樹種も2割以上の土壌サンプルに含まれることが明らかとなった。胸高断面積合計ではブナ科樹木の優占度はフタバガキ科の20分の1にも満たない。これまでフタバガキ科ばかりが注目されていた東南アジアの熱帯雨林だが、菌根菌の宿主としてはブナ科樹木も無視できない存在であることが解明されたのは新規性が高い。中国のアルカリ塩類土壌の菌根菌に関する知見は国際誌Mycorrhizaに掲載された。これまで強アルカリ土壌の菌根菌の知見は乏しく、新規性が高い。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
New Phytologist 58
ページ: 245-248
Mycorrhiza 19
ページ: 329-335