2005年に来襲した巨大ハリケーンは、ミシシッピ河口湿地林に大災害をもたらした。この生態的な破壊と後遺症の正確な診断のため、広域観測、森林破壊・衰退、植生の更新に関する現地調査、および樹木のストレス応答など生理的特性に関する基礎データ収集を行った。 本計画では、以下の4課題についての研究を行った。 ・課題1:画像解析法によるミシシッピ氾濫原に生じた生態的被害と後遺症の広域調査 ハリケーン来襲直前、直後、および1年後のニューオリンズ市を中心としたミシシッピ州、ルイジアナ州のLANDSATデータを購入し、植生被害の程度と回復状況、塩集積の状況等を解析した。また2007年9月および2008年2〜3月に被災地の現地調査を行い、衛星画像データと照合した。これらの結果は2008年も引き続き解析中である。 ・課題2:氾濫原の森林における被害、後遺症、および衰退の生態学的現地調査 2007年9月および2008年2〜3月に被災地の現地調査を行い、ニューオリンズ郊外を中心に湿地林の被害と後遺症の広域調査を行った。 ・課題3:ヌマスギ生残木樹幹に残る過去のハリケーン来襲の影響の年輪年代学的解析 課題2の調査と平行して被災地に100mx50mの生態調査プロットを設定し、ヌマスギおよびヌマミズキ各30本、計60本を選定して成長錐により合計120本のコアサンプルを採取した。これは現在解析中である。 ・課題4:高塩濃度冠水がヌマスギ林の更新と幼稚樹の生育に及ぼす影響の実験的解析 ヌマスギの冠水耐性と耐塩性を調べるため、若木を用いて生理的なモデル実験を行い、光合成や蒸散、植物体内のイオン分析などを行った。成果は2008年3月、日本生態学会、および日本森林学会で発表した。また成果の一部はWetlands誌に投稿中である。
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