研究課題
ラノン県南部Suksamran郡praphat海岸背面のマングローブ域を選び、高分解能衛星データを津波前後で比較した。マングローブ林580haの約1%、沿岸の林縁部5.6haが津波の直撃により倒伏した。林内での林冠ギャップ検出を可能にし、津波後のギャップ発生の少なさを明らかにした。また倒伏林分という厳しい環境下での生存個体の衰弱・枯死過程が検出できた。固定試験地を儲けた津波被害4林分での、センサス繰返しによる成長量と枯死速度推定を行っている。津波後6年経過時点での枯死速度変化パターンは、直撃林分での1年目のピークとその後の低下と揺れだけ林分での2、3年目のピークであり、揺れ林分では5年目から、直撃林分では6年目から枯死速度は再び上昇に転じた。津波被害で劣勢木が一掃された後、通常の競争による個体数減が生じたとみられる。津波直後の枯死は短期間戎長量の低下を招いたが、2~3年目以降は単調増加に転じ、落葉枝量も津波前後でほぼ9~14ton/ha/年の範囲内で林分間の順位にも変動がなかったことから、林分生産力への影響は長期間にわたっては続かなかった。津波で大規模に林分が倒伏し、厚く砂が積もった河口付近では、潮汐が堆砂を除去しマングローブ立地の回復を期待したが、林分の消失は河岸/汀線の侵食を招いた。緑化木として新たに植栽され樹高5m程度までに成長したモクマオウは、しかし足元の砂を奪われ、元来生えていた箇所を残して倒れ出していた。底生生物相は、津波による堆砂林分のうちAvicennia属の割合が高い箇所では数年の間に津波前の状態に回復した。潮汐作用により堆積した表層土壌が持ち去られたうえ、巻貝(ヘナタリなど)や甲殻類(シオマネキなどのカニ類)による生物撹乱(bioturbation)が顕著であったため、細かい粒子のマングローブ土壌が復元した。津波によって海岸から浅海底の砂が移動堆積し、地盤が高くなったRhizophora優占林では、冠水頻度が減少して乾燥が進み、土壌粒度が回復出来ない状態が続いている。
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