研究概要 |
今年度の調査研究は、三つのグループ(被害調査及び資源回復調査グループ,魚類グループ、海藻・海草食性調査グループ)に分けて調査研究を実施した。被害調査及び資源回復調査グループは、今年度は3回(6月,8月,12月)、昨年度に調査研究が実施できなかったパンガー県(4ヵ村)で、クラビー県(2ヵ村)、ラノン県(4カ村)、トラン県(3ヵ村)およびプーケット県(4ヵ村)の津波被害を受けた漁村について、プーケット県のNGOの協力を得て調査研究を実施した。調査の結果、津波を受けた2年間はイカについては漁場が津波の影響が少ない沖合いに変わってしまった。津波被害を受けた地域に海草類の植生が回復してくると、再び沿岸近くでも捕れるようになった。カニについてもイカと同様で、海草が繁茂しているところで捕れ、海草の生育が見られないところでは捕れない。魚類については津波直後は、沖合いの水温が低い所に見かける種類が沿岸近くで捕れたが、1年後には捕れなくなったことを漁師たちは経験した。これは津波直後には、津波による深所の冷水が沿岸域まで押し寄せたことに起因していると考えられ、とくに魚類ではその影響が著しかったことが分かった。また、イカやカニの資源回復は海草類の植生回復との対応が顕著であった。これは、これらの資源生物が海草群落のあるところを産卵場所としているという、生態的特徴に夜と考えられる。いずれにしても、沿岸水産資にとって海草類を主とした植生の回復が、資源回復と漁場管理の上で重要性であることを示唆している。魚類グループは、トラン県のシカオ地域を中心として海草群落域に見られる魚類相について7月と2月に調査を行なった。その結果、海草が繁茂しているところでは種類数、量も多いことが明らかとなった。ここでも海草類の量的,面積的回復とに高い相関関係が見られた。海藻・海草食性調査グループは、トラン県のリボン島周辺域を中心とした海草と海藻類の植生調査を2回行なっている。調査の結果、小型のウミウチワやサボテングサ類の回復は見られたものの、大型のホンダワラ類は津波から4年経った今でも生育が確認できなかった。これに対して海草類の回復は著しく、津波以前までに回復していた。これは前者は胞子の付着基盤である岩盤が津波によって運ばれた砂泥によって現在でも覆われていることから、付着基盤の現状回復が殆んど無いことに起因していると考えられる。一方,海草類は栄養繁殖と有性繁殖の両方の繁殖特徴があり、これが群落再生に非常に有効に寄与したことが考えられる。いずれにしても、沿岸域の水産資源回復には海草類の生育繁茂をどのように促
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