研究概要 |
1地方分権がインドネシア農業に与えた影響の解明 農林水産業に関連する1,098の地方条例を収集し、その内容を分析した。地方分権開始の前後(1997〜2002年)に年間600件程度だった条例施行数は、近年は年間約1,000件に増加した。条例の内容は、地方税収の増大を図ろうとするものや許認可に関するものが多く、地方政府が短期的な歳入増加や権限強化に高い関心を持つことを反映している。一方で、地域特有の資源を生かした農業振興や、環境保全を目的とした条例など、短期的な歳入拡大には直接結びつかないものの、中長期的な経済発展を見据えた条例施行が近年見られるようになってきたことが特筆される。 2地域資源を活用した農村活性化の成功要因の把握 地方分権以降様々な農業振興政策を実施している中部ジャワ州スラゲン県をモデルケースとし、同県農業部担当者、農産物流通業者、稲作農家を対象とした聞き取り調査を実施した。同県は、農業振興政策の一つとして有機米生産を推進しており、現在は県内約4,500haの水田で有機米が生産されている。県が実施している有機米振興政策には、(1)制度資金による農家への融資、(2)普及員による技術指導、(3)県と州の出資・補助により有機米を含む県産米の加工・流通を業務とする公社の設立、(4)有機米を生産している農家組合と流通業者との間の覚書締結のコーディネート等がある。生産費調査の結果は、こうした県の政策が有機米生産農家の収益向上に寄与していることを示唆した。
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