研究概要 |
現地実験と室内実験を実施した. 中国甘粛省白銀市の平堡郷に設置した実験圃場においてトウモロコシとヒマワリを栽培し,その間に5回の地下水揚水実験を行った.汲み上げられた水のECを10分間隔で測定した結果,地下水は塩分に関して成層構造を成していること;深層地下水のECは作物の生長とともに上昇し,収穫後に低下する季節変化を示すこと,などが明らかになった.またナトリウム/カルシウム比は,灌漑水である黄河水よりも地下水の方が圧倒的に大きいことも明らかになった.これらの結果から,地下水の塩類化をもたらすのは土壌表面における蒸発と作物の蒸散であり,マクロポア流が塩水の地下水層への輸送に大きな役割を果たしていること;根域における炭酸ガス濃度が大気中よりも大きいことがCaCO^3の析出をもたらし,地下水のソーダ質化に寄与すること,などが導かれた. 土壌中の可溶塩類量を表す指数であるEC_eと筆者らが提案した容易に測定可能なEC_<SAT>の比較実験を,実験圃場の塩類化土壌を用いて行った.現地の土壌溶液と実験室で得られる飽和抽出液は,特にCa^<2+>とSO_4^-の含有量に大きな違いが現れること;しかしTDSを表すECには大きな差異はなく,EC_<SAT>はEC_eの約1.1倍になることを明らかにした. 一方,昨年に引き続き,国内で大型コラムおよびNFTベッドを用いて作物のイオン吸収実験を行った.その結果,作物の種類によってイオン吸収能は異なるが,地下水と土壌のソーダ質化の主役であるNa^+の吸収能に関しては,トウモロコシよりもヒマワリの方が高いことが明らかになった.
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