研究概要 |
バベシア原虫は熱帯~温帯地域に分布し、ダニによって媒介される。家畜の赤血球内に寄生し、重度の貧血・黄疸を主徴とする致死的感染症を引き起こし、その多くは海外悪性伝染病として指定されている。我が国には、毎年多数の家畜が輸入され、それに伴いバベシア病の日本への侵入が危惧されており、検疫体制強化が重要である。本研究では、世界に先駆けて開発している血清診断法、遺伝子診断法を用いて、アジア・アフリカにおけるバベシアの浸潤・流行状況を明らかにし、日本の動物検疫体制の強化に貢献することを目的としている。 最近明らかにされたウシバベシアB.bovisのスフェリカルボディ4(BbSBP4)遺伝子がコードする蛋白質を作製し、この組換え抗原とこれまで報告されている抗原を用いてELISAについて検討を行った。その結果、BbSBP4蛋白質を用いたELISAは、BbMSA-2c、BbRAP-1/CT、BbTRAP-T、BbSBP-1を用いたELISAに比較して、優れた感度と特異性を有している事が明らかとなった。 平成22年9月23日から28日まで、上海獣医学研究所の張教授らの協力により、中国南部地域より100頭の牛の血清サンプルを採取し、B.bovisのBbSBP4、BbMSA-2c、BbRAp-1/CT、BbTRAP-T、BbSBP-1を用いたELISAおよびIFATにより感染率を検討した。その結果、それぞれ40%、31%、27%、4%、31%、および36%で、BbSBP4を用いたELISAが一番高い感染率を示した。 また、55例の馬血液DNA試料についてLAMP法により感染状況を検討したところ、B.equiとB.caballiでそれぞれ81.8%と56.3%の感染率が認められた。また,混合感染も49.0%のDNA試料に認められた。
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