平成15~18年度の科研費(基盤(B))の調査により、ユーラシアステップにおいて種多様性の減少という問題が普遍的にあること、アルタイ・天山両山脈の東西でステップ植生が異なること、などが明らかになった.この東西のステップが異なることに注目し、二つのステップ間で種組成、群落構造、立地環境の違いを詳細に明らかにすることにより、それぞれの群落特性に基づいた生物多様性の保全や沙漠化対応策の立案に資することを目的とした。4年目の本年は、3年前のカザフスタン、-昨年のモンゴル中部、昨年の中国新彊ウイグル自治区に引き続き、モンゴル西部において調査を実施した。モンゴル西部は3年前のカザフスタンからはアルタイ山脈を隔てた東側に当たり、-昨年のモンゴル中部のさらに西、昨年度の新彊ウイグルからは北側に当たる.ユーラシアステップの東西を結ぶ重要地域である. モンゴル西部のウランゴム周辺で2カ所、ホブド周辺で6カ所の合計8カ所を調査し、フロラ、植生、群落構造、土壌について明らかにした。植生については、モンゴル中部や東部の植生に類似した典型草原植生と、やや乾燥した荒漠草原に近い植生のニタイプが見られた。各種の指標を用いて沙漠化の程度を評価したところ、調査箇所によって異なる指標で沙漠化が見られ、全調査箇所で共通した指標では明らかな沙漠化は見られなかった。
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