この十数年来、海外の業者からヘビ毒と毒腺を入手する事が、事実上不可能になってきた。本事業により、熱帯・亜熱帯地域に生息する毒ヘビのヘビ毒と毒腺を採取するため、毒ヘビが生息する現地を訪問し、研究材料の確保と、調達ルートの開拓を試みた。ヘビ毒タンパク質の構造と、機能の多様化を網羅的に解析するために、今年度はマムシ、ヤマカガシおよびハブの毒線を用いて網羅的に解析を行った。さらに、地球上に生息する毒ヘビ研究を盛んにするために、2009年7月17日から3日間、米国ボストンでサテライトシンポジウムを企画開催し、多数のヘビ毒研究者との交流を深めた。このシンポジウム開催をきっかけに、シンガポール、スイス、米国(2名)そして日本(森田)が協議し、この十数年間の研究成果を公表するために600ページに上る本の出版を企画した。森田はその編集者の一人となった。既に43章からなる原稿は編集済みで、2010年11月にSpringer社から出版される予定である。一方、我々が発見したrhodocytinを用いた共同研究は、米国ボストンのTurley博士と進め、rhodocytinの新規生理活性を発見した。また、5年前に見出し現在、研究を進めている凝固Xa因子インヒビターの性質を解析すると共に、循環器病センター研究所の武田壮一博士とその結晶化と立体構造解析を決定すべく共同研究を進めている。
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