この十数年来、海外の業著からヘビ毒とヘビ毒腺を入手する事が、事実上不可能になってきた。今回、熱帯・亜熱帯地域に生息する毒ヘビの毒腺とヘビ毒を確保するために本研究を行った。地球上に生息する毒ヘビ研究を盛んにするために、2009年7月に3日間、米国ボストンでシンポジウムを開催し、多数のヘビ毒研究者との交流を深めた。このシンポジウム開催をきっかけに、シンガポール、スイス、米国(2名)そして日本(森田)が協議し、この十数年間の研究成果を公表するために43章からなる797ページに上る本をSpringer社から2010年に出版した。森田はその編集者の一人となった。我々が東南アジアに生息するCalloselasma rhodostoma毒から発見・単離した血小板アゴニストであるrhodocytinを用い、米国ボストンのTurley博士と共同研究を進め、免疫応答の抗原提示細胞であるDendritic cell(樹状細胞)の作用機構を解明する上で、有用であることを明らかにした。その結果は現在、投稿中である。一方、オーストラリアに生息する毒ヘビPseudechis australisの毒からpseudechetoxin (PsTx:Cyclic nucleotide-gated(CNG)ion channel inhibitorを単離した。PsTxを用いて、英国のKemp博士らとの共同研究で、肺表皮細胞での液ホメオステイシスにおけるCNGAの影響を解析した。その結果は現在、投稿中である。さらに、南アフリカで生息するBitis aroetams毒から単離しbitoranと命名した凝固Xa因子インヒビターの機能解析を行った。そのX線結晶構造解析は、現在、循環器病センター研究所の武田壮一博士との共同研究で進めている。
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